信用の基盤
強力なガバナンスと保守的な財務管理、健全なバランスシート、そして加盟国の支持を得た資本構成により、ADBは債券投資家の皆様に最高水準の安全性を提供します。
ADBはトリプルAの格付けに基づいて、投資家の皆様に極めて質の高い投資商品を提供しています。トリプルAの格付けは下記に基づくものです。
- 出資者である67の加盟国による強い支持と堅実な資本構造
- ADBの資産内容と優先債権者待遇による資産品質の高さ
- 堅実な財務政策とリスク管理政策による高いリスク負担能力
ADBは、元本、利息もしくはその他の手数料が6カ月延滞している融資、または、まだ延滞が発生していなくても利息もしくはその他の手数料が期日通りに回収できないと予想される融資については、その事実が判明した時点で未収利息不計上扱いとする方針を定めております。未収利息不計上扱いの融資にかかる利息およびその他の手数料は、ADBがそれを受け取った場合にのみ収入として計上されます。支払期限を過ぎた全ての元本、利息およびその他の手数料が回収されれば、当該融資は未収利息計上扱いに戻ります。ソブリン融資について、ADBは債務繰り延べ合意には参加しないとの立場を維持しています。ノンソブリン融資については、他の手段が尽くされた場合にのみ債務の繰り延べに応じることがあります。
2021年末時点で、5件のノンソブリン融資(元本総額1億9,400万ドル)が未収利息不計上扱いとなっており、うち2,600万ドルは180日を超える延滞となっていました。2021年末時点で、未収利息不計上のソブリン融資はありませんでした。
健全なバランスシートと67の加盟国の支持を受けた資本構成により、ADBは債券投資家の皆様に最高水準の安全性を提供します。
応募済資本は、払込資本と請求払い資本により構成されます。
払込資本は、ADBのOCR融資業務に利用可能な資本金の自己資本部分を構成します。これは利益剰余金によって補完され、ADBによる資金調達の基盤を形成しています。
請求払い資本は、ADBの借入先の大規模な債務不履行という不測の事態が発生した場合にのみ、ADBの債権者(主にADB債券を保有する投資家とADB保証債務の保有者)保護を目的として利用することができます。過去にADBが請求払い資本の実行を請求した例はありません。
ADBの出資者はアジア・太平洋地域の開発途上国と先進加盟国合計49カ国、および19カ国の域外加盟国です。 各出資国は、ADBの全ての決定権限を有する総務会に代表を派遣しています。 2021年末現在、出資比率で見たADBの5大出資国は日本と米国(それぞれ全体の15.6%)、中国(6.4%)、インド(6.3%)およびオーストラリア(5.8%)です。
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堅実な財務管理
ADBの強固な財務体質を支えているのは次の2つの基本原則です。
- 融資限度枠:ADBの融資政策に基づき、融資実行残高、出資承認額およびADBが請求されうる保証の現在高総額の合計は、毀損していない応募済資本、準備金および剰余金(特別準備金を除く)の合計額を超えることはできません。
- 借入限度枠:ADBの借入政策に基づき、総借入残高は、非借入加盟国からの請求払い資本、払込資本および準備金(剰余金を含む)の合計額を超えることはできません。
ADBは、堅実な財務管理政策によって融資および借入の総額を常にこれらの限度枠内に余裕を持って維持しています。
包括的リスク管理
ADBのリスク管理体制は、ガバナンス、政策およびプロセスという3つの要素を中心に構成されています。ガバナンスを担う最高機関は理事会で、ADBのリスク選好度を決定するリスク関連政策の検討と承認を行います。ADBは独立したリスク管理部を設置しており、様々な管理委員会がADB全体に関わるリスク対策の監督や、理事会と総裁に付議される関連稟議の承認を担当しています。ADBのリスク管理体制にはリスク委員会が含まれ、同委員会はADBのリスクについて高レベルの監督を行い、リスク政策や対策を総裁に勧告します。
ADBは、業務ポートフォリオの既存案件の信用度をモニターし、新規ノンソブリン案件についてはリスク評価を行い、必要な場合は問題案件の解決に責任を持って取り組みます。ADBはまた、カウンターパーティの信用度、金利リスクや為替リスクといった、資産運用業務における市場リスクや財務リスクについてもモニタリングを行っています。さらに、組織全体のオペレーショナル・リスク管理フレームワークを開発しています。ポートフォリオ全体について、ADBは各種の限度額や集中度をモニターし、貸倒引当金を積み立て、一括準備金を含む貸倒引当金の必要額を計算し、適正資本量を評価しています。 ADBは使命を果たす上で、①信用リスク、②市場リスク、③流動性リスクや④オペレーショナル・リスクなどの様々なリスクを負うことになります。
- 信用リスク(発行体):ADBでは発行体とカウンターパーティの信用リスクを管理するため、2社以上の評判の良い格付け機関から格付けを受け、かつ財務状況が健全な機関に取引先を限定しています。さらに、財務ポートフォリオは一般的に、短期金融市場商品や国債などの安全性の高い資産に投資されています。加えて、ADBは企業投資、預託関係およびその他の投資商品について保守的なエクスポージャ制限を設けています。
- 市場リスク:ADBは、様々な定量分析を活用して財務ポートフォリオの金利リスクをモニター・管理しています。ADBはすべてのポジションを値洗いし、金利リスク指標をモニターし、ストレステストおよびシナリオ分析を実施しています。ADBは、融資および投資の支払通貨と受領通貨をマッチさせることによって為替リスクを管理しています。借入金または投資資金を他の通貨に転換できるのは、通貨スワップまたは先物為替契約によってその取引が完全にヘッジされている場合に限られます。
- 流動性リスク:ADBは流動性政策を通じて流動性リスクを管理しています。この政策は、資本市場が不安定な場合でも、あらゆる債務の履行に十分なキャッシュ・フローを確保できる内容となっています。
- オペレーショナル・リスク:ADBは、オペレーショナル・リスクを低減すべく、リスクを許容可能な水準に抑制する内部統制、モニター手法および業務手順を維持しています。
ADBはまた、災害等の影響を軽減するため、情報技術を中心とする事業継続性の強化を行っています。
ADBの財務リスク管理の詳細については 『年次報告2019』をご覧下さい。
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流動資産は、融資の実行や債務の返済等に必要な現金の提供を常に可能にし、、財務的なストレスが発生した場合に流動性のバッファーとなり、ADBの収益基盤に寄与するものです。ADBの流動資産への投資はADBの投資方針に従って行われます。その主な目的は、投資資金の安全と流動性を維持することです。
流動資産投資は、国債等の公債、定期預金、銀行等金融機関の無条件の債務、および一定の範囲内で、A-以上に格付けされた社債の形で保有されています。
ADBの流動資産は19種類の通貨で運用され、目的別のポートフォリオに分けて管理されています。運転資本ポートフォリオ(業務用現金ポートフォリオと現金クッション・ポートフォリオ)は、ADBの短期的キャッシュ・フローに活用され、借入金を融資実行まで保有しておくことを目的としています。裁量的流動資産の資金は借入により調達されます。その目的は、キャッシュ・フローのニーズが生じる前に機動的に借入を行うことによりADBの中期資金調達プログラムを柔軟に実施できるようにすることと、資本市場でのプレゼンスを維持することにより短期資金へのアクセスを強化することです。中核流動資産ポートフォリオは、流動性を緩衝するという主たる目的のために運用されます。同資金は主に株式で調達され、2021年末現在、同ポートフォリオにおける主な通貨の平均運用期間は3.0年でした。
流動資産ポートフォリオの2020年および2021年の年末時点の残高と収益率は下記の通りです。
年末時点の流動資産ポートフォリオ残高と収益率
年末時点の残高*(単位:百万米ドル) | 流動資産の年間利益率** (%) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
償却原価 | 公正価値 | |||||
2021 | 2020 | 2021 | 2020 | 2021 | 2020 | |
中核流動資産 | 19,088 | 19,331 | 1.8 | 2 | -0.7 | 4.2 |
業務用現金ポートフォリオ | 514 | 245 | 0 | 0.4 | 0 | 0.4 |
現金クッション・ポートフォリオ | 7,824 | 8,744 | 0.4 | 0.8 | 0.3 | 0.9 |
裁量的流動資産 | 16,460 | 12,991 | 0.5*** | 0.4*** | 0.5*** | 0.4*** |
特別目的ポートフォリオ | 1,037 | 848 | 2.1 | 2.5 | -1.2 | 6.8 |
合計 | 44,923 | 42,159 |
* 再販売契約の下で買い戻した証券、買い戻し契約のもとで譲渡された証券、および投資関連のスワップを含む。流動資産管理の継続的実施により、ポートフォリオの構成は年ごとに変動することがある。
** 償却原価に基づく収益率は、収支一覧表に報告される投資収入および実現損益に基づく。公正価値に基づく収益率には、その他の包括的損益として報告される未実現損益が含まれ、その時々の市場環境に応じて変動する。
*** 資金調達費用に上乗せされるスプレッド。
注:小数点以下の処理により合計が一致しない場合がある。本ウェブサイトの内容または資料は、黙示的にも明示的にも投資に関する勧告またはアドバイスを含むものではなく、またADBまたはその代理人による有価証券売買の申し込みまたは勧誘を構成するものではありません。詳細については「利用条件」をご覧下さい。
2021年末現在、ADBの出資者はアジア・太平洋地域の開発途上国と先進加盟国合計49カ国、および19の域外加盟国です。
非借入加盟国 | 出資比率(2021年)* |
---|---|
日本 | 15.6% |
米国 | 15.6% |
オーストラリア | 5.8% |
カナダ | 5.2% |
韓国 | 5.0% |
ドイツ | 4.3% |
フランス | 2.3% |
英国 | 2.0% |
イタリア | 1.8% |
ニュージーランド | 1.5% |
その他 | 7.7% |
27カ国合計 | 66.8% |
借入加盟国 | 出資比率(2021年)* |
---|---|
中国 | 6.4% |
インド | 6.3% |
インドネシア | 5.4% |
マレーシア | 2.7% |
フィリピン | 2.4% |
パキスタン | 2.2% |
タイ | 1.4% |
バングラデシュ | 1.0% |
その他 | 5.3% |
41カ国合計 | 33.2% |
* 12月31日時点の応募済資本総額に対する割合。小数点以下の処理により合計と一致しない場合がある。