フィリピン・マニラ(2022年12月7日) - アジア開発銀行(ADB)は、フィリピンのミンダナオ地方とビサヤ地方に380基の通信塔を整備するため、タイガー・インフラストラクチャー(Tiger Infrastructure Philippines, Inc.)との間で4,000万ドルの融資契約を締結した。このインフラにより、モバイルネットワーク事業者は、消費者に対してあらゆるモバイル・データサービスを提供することが可能になる。
この融資は、ADBの通常資本財源からの2,500万ドル(このうち2,000万ドルはフィリピン・ペソで実行される)と、ADBが管理するアジアインフラパートナーシップ信託基金(LEAP)からの1,500万ドルの拠出により構成される。
通信塔は、一つ以上の無線通信アンテナを備える。このプロジェクトは、複数のモバイルネットワーク通信事業者が同じ通信塔を借り受けて利用することができる、タワー・シェアリングを推進するもので、タイガー・インフラストラクチャーがその建設、土地のリース、運用、保守を担う。通信塔に装備されたすべての通信機器は、テナントに帰属する。
スザンヌ・ガブリADB民間部門業務局長は、「持続可能な開発目標 (SDGs)の達成、特に教育やヘルスケア、金融、決済などの分野におけるデジタル・コネクティビティの貢献は計り知れないものがある」とした上で、「このプロジェクトは、ビサヤやミンダナオなどのサービスの行き届いていない地域においてデジタル経済へのアクセスを向上させ、地域コミュニティの生活の質の向上に目に見える効果をもたらす」と述べた。
フィリピンでは、2021年時点で約2万7,000基の通信塔が設置されており、これは人口100万人当たりでわずか164基ほどと、この地域で最も低い普及率となっている。フィリピン政府によると、2031年までにまだサービスがない、または不十分な地域において、さらに6万基ほどの通信塔の整備が必要となる。
タイガー・インフラストラクチャー・グループのSimon Skouboe代表取締役は、「ADBからこのような支援と支持を得られることを光栄に思う。我々は、モバイルネットワークの接続やデジタル変革を通じて、フィリピンの発展を支えるというビジョンを共有している」とした上で、「タイガー・インフラストラクチャーは、ADBとの協働によって、デジタルインフラに係るポートフォリオを強化することができ、アジアにおける信頼性の高いモバイルネットワーク接続への需要に応え続けていくことを確信している」と述べた。
タイガー・インフラストラクチャーは、シンガポールで法人登記されているCell Tower Services Pte. Ltd(CTSP)およびDaily Life Renewable Energy Pte. Ltd(DLRE)による合弁会社である。CTSPは世界各地で展開している通信塔事業に定評があり、DLREはアジア・太平洋地域において再生可能エネルギーシステムの設計、エンジニアリング、調達、建設工事、設置、検証などのサービスを手掛けている。
LEAPは、国際協力機構(JICA)からの15億ドルの出資を受け、2016年に設立された。ADBの開発途上加盟国における質の高い、持続可能な民間セクターのインフラ事業の実施を支援しており、支援対象分野は二酸化炭素の排出削減、省エネルギー、適度な負担での医療や教育、情報通信サービスの提供など多岐にわたる。
ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。