フィリピン、マニラ(2022年12月14日)– アジア開発銀行(ADB)は、世界経済の見通しが悪化する中、アジア・太平洋地域の開発途上国の経済見通しを下方修正した。

本日発表された『アジア経済見通し2022年版』(Asian Development Outlook (ADO) 2022)の定期補足版によると、同地域の経済成長率は、今年が4.2%、来年が4.6%となる見通しである。9月時点の見通しでは、2022年は4.3%、2023年は4.9%とされていた。

世界各国および域内の中央銀行による金融引き締め政策やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中国における度重なるロックダウン措置などの影響が、アジア開発途上国の新型コロナウイルスのパンデミックからの成長回復を遅らせている。ゼロコロナ政策による規制と不動産市場の低迷は、中国の成長見通しのさらなる下方修正につながった。

アルバート・パークADBチーフエコノミストは、「アジア・太平洋地域は今後も回復傾向が続くものの、世界情勢の悪化は、来年に向けてこの地域の勢いが失われつつあることを意味している」とした上で、「各国政府は、依然として残る新型コロナウイルス感染症による課題を乗り越え、特に貧困層や社会的弱者への食料やエネルギー価格高騰の影響を緩和し、包摂的で持続可能な経済回復を確かなものとするために、より緊密に協力する必要がある」と述べた。

ADBはアジア・太平洋地域の開発途上国の今年のインフレ見通しを、4.5%から4.4%に引き下げた一方で、エネルギーと食料による長引くインフレ圧力を要因として、来年のインフレ見通しを4.0%から4.2%に引き上げた。

中国の今年の経済見通しは、前回予想の3.3%から3.0%に下方修正され、来年の見通しは、世界的な景気減速により4.5%から4.3%に引き下げられた。インドの成長見通しは、今年度7.0%、来年度7.2%と据え置かれた。

アジア開発途上国は、成長見通しが下方修正されたものの、成長率、インフレ率ともに世界の他の地域よりもいまだ良好に推移すると思われる。マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムにおいて堅調な消費や観光の回復が見られる中、ADBは東南アジア地域の今年の成長見通しを5.1%から5.5%に引き上げた。しかし、世界的な需要の低迷を踏まえ、来年の見通しは5.0%から4.7%に下方修正した。2022年の成長見通しは、中央アジア・コーカサス地域では3.9%から4.8%に上方修正され、太平洋地域についてもフィジーの観光の力強い回復を受けて4.7%から5.3%に引き上げられた。

ADBの年次主要経済報告書である『アジア経済見通し(ADO)』は毎年4月に発行され、その「改訂版(Update)」が9月に、そして通常は7月と12月に簡潔な補足版が発行される。アジア開発途上国とは、46のADBの開発途上加盟国・地域を指す。

ADBは、極度の貧困の撲滅に努めるとともに、豊かでインクルーシブ、気候変動や災害等のショックに強靭で持続可能なアジア・太平洋地域の実現に向け取り組んでいる。ADBは1966年に創立され、49の域内加盟国・地域を含め68の加盟国・地域によって構成されている。

Media Contact